ジェイアール西日本メンテック事件
NHK盛岡放送局事件
盛岡高判平16.9.29
T 事件の概要
NHKの放送受信料の徴収を受託していた2名の集金人(以下、甲らという)が、成績不振を理由に契約を解除された。甲らはNHKに対し、NHKとの間の労働契約上の権利を有する地位の確認を求め、盛岡地裁に訴訟を起こした。
一審は、甲らの請求をすべて棄却したため、甲らは控訴した。
U 裁判における争点
NHKと甲らとの受信料徴収に関する委託契約が、果たして労働契約としての性質を有しているかどうか? 具体的には、契約当事者間に指揮監督を中核とする使用従属関係が認められるか否か?
V 判決の内容
@甲ら受託者には、労働関係を規律する根本規範とも言うべき就業規則が、適用されていない。これを逆に言えば、業務遂行についての時間、場所、方法などは、受託者の自由裁量に委ねられている。すなわち、受託者は、受信料徴収の地区が限定されている点を除いて特段の制約はなく、業務遂行上、委託者からの拘束を受けていない。
A甲ら受託者の業務は、受信料の徴収、あるいは受信契約の取次ぎなどに限定され、契約で具体的に定められた業務以外の業務を遂行することを指揮命令されない。仮にもそのような指揮命令があったとしても、受託者はこれを拒否する自由を有している。
B受託者の報酬は、委託者の職員に適用される給与規定の適用を受けていない。
C受託者の報酬は、税法上、事業所得と区分されている。
D受託者は兼業をする自由を有している。
これらの事情に照らして考えれば、本件契約は、受託者が委託者に対し、指揮命令に服する形で一定時間の労務を提供し、その対価を取得するという使用従属関係を規定する性質を有するとは言いがたい。
従って、本件契約は、受託者が委託者の事業に使用され、賃金を支払われるという労働契約の内容を有するものとは認められない。
よって、一審の判断を支持し、甲らの控訴を棄却する。
W 留意点/教訓
本判決は、甲ら受託者が「本件契約が労働契約とは異なる内容の契約であることを十分に理解した上で契約をし」たと、判断している。
今後、このような業務委託を締結するには、労働契約とは異なる内容の契約であることを、前もって十分に説明することが肝要である。
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