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ジェイアール西日本メンテック事件

法令・社内ルールを守らない管理職の格下げ

日本レストランシステム事件

大阪地判平16.1.23

 

T 事件の概要/事実関係

@ A社は、スパゲッティ専門店などをチェーン展開している外食産業の会社である。

A社の賃金は、本給(基本給、職務給)と諸手当(職務手当、時間外手当等)で構成され、基本給は全従業員一律月額12万円、職務給と職務手当は職位により決定される。

A Bは、マネージャーA職で4店舗を担当統括していたが、担当店舗従業員やアルバイトの店舗内における料金未払いでの飲食を黙認したことや、原価の操作など、社内ルールに反した行為を理由に、マネージャーA職より1ランク下のマネージャーB 職に降格され、3施設の担当統括になった。

B A社は、平成14年9月、BをマネージャーB 職よりさらに1ランク下の店長職に降格し、同時に営業4部(東京)に配転する旨の命令を告知した。その際、A社は、下記の内容を記載した文書を交付した。

a.  降格は、店舗従業員やアルバイトによる「無銭飲食」黙認をマネージャーとしての監督不行き届きと断じ、それに対して行った処分である。

b.  配転命令は、最大のマーケットである東京において、管理職としての自己研鑽を励むことを目的とし、その配転期間はBの実績次第である。

C Bはこれを不服とし、降格処分および配転命令は無効であることの確認を求める訴えを大阪地裁に起こした。

 

U 大阪地裁の判決

請求棄却。

判決理由:

a. A社においては、平成12年4月から能力主義・成果主義賃金体系が採択されており、従業員は、会社から基本給として一律月額12万円が支給されるほか、職務遂行能力に応じて職位が決定され、職位に応じた職務給と職務手当が支給されている。職位は従業員の経験、勤務成績等、人事権の行使を要素に決定されることとされているほかは、特段詳細な資格要件が規定されているわけではない

b. 就業規則32条は、従業員が、職務遂行上において、再三の指示・命令にかかわらず業務改善がなされず、会社から要求された職務遂行が行われない場合、降格されることがあることを規定している。

 

V ポイント/教訓

本判決は、就業規則32条の要件が満たされれば、会社が従業員を降格することができ、それに伴い職務給と職務手当も減額できると判示した。

 

降格は懲戒処分として行われることがあるが、本件は人事権の行使による降格である。 人事権の行使による降格には、@役職・職位を引き下げるもの(昇進の反対措置)と、A資格制度上の資格や等級を引き下げるもの(昇格の反対措置)がある。

@前者は、例えば成績不振を理由に営業所長を営業所員に降格する場合や、勤務成績不良を理由に部課長をいわゆる平社員に降格する場合などである。この場合の降格は、たとえ就業規則に根拠規程がなくても人事権の行使として会社の裁量的判断により可能であるとの判例がある。

Aこれに対して、技能・経験の積み重ねによる職務遂行能力の到達レベルである資格や等級には、それ自体に年功的要素が含まれていて、本来、降格は予定されていないものである。従って、資格制度上の資格や等級を引き下げるには、前者と異なり、就業規則に明確な根拠相当の理由がなければならないとの判例がある。

 

結論としては、就業規則に降格事由が存する限り、降格は可能であるとした本判決より学ぶことは、就業規則に降格事由を盛りこむことの重要性である。



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