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ジェイアール西日本メンテック事件

セクハラ損害賠償事件

横浜地判平16.7.8

 

T 事件の概要/事実関係

@     市の女子職員(以下、「被害者」)はしばしば上司(以下、「加害者」)からセクシュアルハラスメントを受けていた。

A     「被害者」は相談窓口にセクシュアルハラスメントの事実を申し出、就労環境の改善を訴えた。

B     しかるに、相談窓口は適切に対応しなかったため、精神的被害を受けたとして、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した。

 

U 判決の内容

市に対し、上司のセクハラ行為について慰謝料120万円、相談窓口の担当課長の行為について慰謝料80万円、および弁護士報酬20万円の合計220万円の支払いを命じた。

@     上司のセクハラ行為について

雇用の分野における均等な機会及び待遇の確保等に関する法律21条1項の「性的な言動により女性労働者の就業環境が害される」いわゆる「環境型セクシュアルハラスメント」に該当すると断罪した。

A 担当課長の対応について

「加害者」に対する事情聴取からセクハラがあったことを認識していたにもかかわらず、「被害者」から事情を聴取することもなく、また「加害者」に対して何らの処置も取らなかった。これは権限や職責の不行使が許容される限度を逸脱した不作為であり、国家賠償法1条1項に照らして違法であると断じた。

 

V ポイント/教訓

「加害者」のセクハラ行為は論外としても、相談窓口の責任が問われたことは、各企業においても、その在りかたについて、再検討の要がある。

雇用機会均等法21条は、事業主に対し、セクハラの予防や事後対応の配慮を義務づけている。また均等法の規定を受ける指針では、次の3項目を提示している。

a.セクハラが犯罪であるという認識を周知徹底させること。

b.相談・苦情の対応窓口を設置し、適切かつ柔軟に対応すること。

c.事後の対応を迅速かつ適切に行うこと。

相談窓口の機能(上記のbおよびc)を高めるためには、

・あらかじめ対応マニュアルを作成するなど、体制を整備しておくこと。

・相談があった場合、迅速かつ公平に対応すること。

・些細なことに思えても誠意をもって対応すること。


 上記のなかでも、公平を保つことが、とりわけ重要である。

相談窓口の担当者が男性である場合、どうしても男性をかばう通弊がある。まして「加害者」が上席である場合、調査に及び腰になりがちである。

ここに重要な原則がある。それは事情聴取を行う場合、「被害者」からはじめること。「加害者」である上司の報復や、地位を利用した証拠隠滅(たとえば部下との口裏合わせなど)を防ぐためである。現に、郵政公社セクハラ事件(大阪地判平16・9・3)において、裁判所は、被害者の事情聴取前に、まず加害者から話を聞いたことは不備であったとしている。

本件は公務員の事案であるため公務員個人としては免責され、慰謝料は市が支払った(国家賠償法1条)。しかし民間企業の場合には、そのような免責を認める法はなく、個人の支払いになることを銘記すべきである。



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