うつ病と労務管理
近年増加傾向にある『うつ病』とは、何らかの原因で気分が落ち込み、生きるエネルギーが乏しくなり、結果、身体のあちこちに不調があらわれる病気といわれています。日本人の5人に1人が、一生のうちで一度はうつ病を経験するといわれている時代ですが、社員がうつ病を発症した場合どのように対応すればよいでしょうか。
1.うつ病とは
うつ病が重症化すると、日常の生活に支障が現れるまでになりますが、従来原因別に「身体因性うつ病」、「内因性うつ病」、「心因性うつ病」と分類されてきましたが、最近では症状の程度と持続期間による分類(重症のうつ病「大うつ病」と軽症のうつ病)が行なわれるようになってきました。気分の落ち込み不調が2週間続けば『うつ』の可能性といわれますが、『うつ』の診断には、@抑うつ気分 A興味または喜びの喪失B体重の減少または増加 C不眠または睡眠過多等という項目を問診で行う「DSM−W」というマニュアルが多く採用されていて、詐病を見抜く客観性に欠けているとの指摘もあります。
2.社員がうつ病になったら
うつ病の治療は @休養 A薬物療法 B精神療法が基本となります。会社の対応としては、基本的に以下のとおりとなります。
@ 診断書を提出してもらい、内容の確認。「休養が必要」と証明された診断書自体は比較的容易に入手できる場合があり注意が必要です。原因も合わせて調査します。
A 診断内容を判断し、休職命令を交付。一般的には診断書に記載された休養必要期間を休職期間としますが、症状にもよりますが治癒まで半年〜1年はかかるといわれています。(休職制度自体は解雇猶予措置といえるもので、会社のルールとして絶対に制度化しないとならないわけではないですが、会社の規定の範囲で対応することとなります。)休職中は原則、傷病手当金申請をすることができる場合があります。
B 休職期間満了前に復職の打合せ。うつ病は1年以内に50%近く再発するといわれており、不完全な状態での復帰は見合わせるべきです。必要に応じて「会社の指定する医師」への受診命令もルール化しておくことがよいです。短時間勤務なども視野に無理のかからないよう復帰をサポートしていく必要があります。
3.注意すべきこと
うつ病の原因が長時間労働や職場の精神的ストレスの場合は(労災の対象となるケースあり)注意が必要です。特に1月80時間超の残業のある場合、医師による面接指導をする義務がでてくる場合もあります。また、長時間労働をそのまま放置しますと会社の安全配慮義務が問われる可能性もあり注意が必要です。
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