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労働者の解雇にあたっての留意点 2

 

前回は、使用者(会社)が労働者を解雇するにあたり、法律上守らなければならないルールについて、さらにそのルールを守ったとしても裁判で争った場合、裁判所が確立した「解雇権濫用の法理」によって解雇権が大幅に制限されることについて概論をまとめました。今回は、「解雇権濫用の法理」が確立した背景と今後の展望についてまとめてみました。

 

1. 「解雇権濫用の法理」の意味

「解雇権濫用の法理」とは、会社都合で行われる「整理解雇」はもちろん、労働者に責任のある「普通解雇」についても、労働者保護の立場からその解雇が過酷すぎないかどうか、さまざまな事情を考慮の上、判断されなければならないとする法理です。このために使用者は「解雇は自由に行うことはできない」という認識を持つことになりました。

 

2. 「解雇権濫用の法理」が確立された理由

日本に「解雇権濫用の法理」が確立されたのは、終身雇用制・年功序列制という日本特有の雇用慣行が高度成長期に根付いたためといわれています。

終身雇用制

@ 長期の雇用を前提として社員を採用し、

A OJTなどの教育や人事異動を繰り返すことによって社内キャリアを身につけさせ、

B 身につけたキャリアに応じた仕事と賃金を支払うというシステム

年功序列制

「終身雇用制」のシステムの下、年々仕事の内容が高度なものとなることを前提に賃金も上昇していくシステム

 

3.     終身雇用制・年功序列制が雇用社会にもたらしたもの

終身雇用制・年功序列制というシステムが日本の雇用社会に根付いたことにより、新規学卒の労働者は、本人あるいは会社に特別な事情が発生しない限り、当然に定年まで勤務できるだろうという期待を持つようになりました。つまり、特別な経営上の都合が発生しない限り、雇用契約は解消されない(長期の雇用を約束する)というルールが作り上げられたのです。このルールに基づき、裁判所は労働者保護の立場から、使用者の解雇権を制限する役割を担ってきました。

しかしながら、現在の日本の雇用情勢は大きく変動し、新入社員を1から教育して育てていくだけではなく、スペシャリストを中途採用する必要性も生じています。賃金に占める能力給の比率の高まりにより年功序列制はほぼ崩壊し、労働者の意識の変化により終身雇用制の下で働く人たちが減少していく中で、裁判所の確立した法理も労働者保護の程度について少しずつ見直しがされていくと考えられています。      



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