外国人雇用の留意点
1.外国人に対する労働関係法令の取り扱いは。
日本国内で就労するかぎり国籍を問わず、原則として労働関係法令の適用があります。
具体的には、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等については、外国人についても日本人と同様に適用されます。また、労働基準法第3条は、労働条件面での国籍による差別を禁止しており、外国人であることを理由に低賃金にする等の差別は許されません。なお、雇用保険については、被保険者となる所要の条件を満たす場合は、在留資格の如何を問わず原則として被保険者となります。
(労働基準法第3条)
「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」
2.外国人を雇用する際に、労働条件等で留意する点はありますか。
一般に外国人労働者は国内に生活基盤を有していないこと、日本語や日本の労働慣行に習熟していないことなどから、就労にあたっての問題が起こりがちです。そのため、外国人労働者を雇用する際に配慮すべき事項について、厚生労働省では「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」を策定しています。この指針を参考に外国人労働者の適正な労働条件の確保をすることが肝要です。
3.不法就労とはどのような場合をいいますか。
不法就労とは次のような場合をいいます。
@わが国に不法に入国したり、在留期間を超えて不法に残留したりするなどして、正規の
在留資格を持たない外国人が行う収入を伴う活動
A正規の在留資格を持っている外国人でも、資格外活動許可を受けないで、その許可の範囲を超えて行う収入を伴う就労活動
4.不法就労外国人を雇用場合、雇用主に罰則はありますか。また、その内容はどのようなものですか。
入管法には「不法就労助長罪」が定められています。不法就労助長罪は、
@事業活動に関し、外国人を雇用するなどして不法就労活動をさせる行為
A外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下におく行為
B業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又はAの行為に関しあっせんする行為を処罰の対象とし、これらに該当した者については3年以下の懲役しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定められています。
5.不法就労外国人とは知らずに雇用した場合も「罰則」が適用されますか。
不法就労外国人であることを知らないで雇用した場合には、処罰されることはありません。
ただし、不法就労であるとはっきり認識してなくても、状況からみてその可能性があるにもかかわらず、確認をせずにあえて雇用するような場合には処罰されます。外国人の雇用に際しては、旅券(パスポート)または外国人登録証明書等により、「在留資格」「在留期間」「在留期限」を確認することが大切です。とくに「在留資格」については、就労活動が認められる在留資格かどうか確認が重要です。
6.外国人も雇用した場合、社会保険に加入しなければなりませんか。
健康保険等の社会保険の適用については、外国人労働者も日本人と同様に適用になります。そのため、健康保険、厚生年金保険の適用事業所で外国人を雇用する場合は、これらの制度の加入者となり、日本人と同様に給料に応じた保険料を納入する等の手続きが必要となります。外国人の中には年金保険は掛け捨てになると誤解したり、保険料の自己負担分を嫌って、加入をしたがらない例があるようですが、任意加入ではありませんので対象となる場合には加入しなければなりません。なお、外国人の場合、年金保険には脱退一時金制度があります。
7.外国人に係かる税金の取り扱いはどのようになりますか。
外国人の労働者に対して給与等を支払う場合、所得税の源泉徴収を行う必要があります。
源泉徴収の対象となる収入の範囲及び方法は、その者が「居住者」であるか「非居住者」であるかによって異なります。「居住者」の場合、一般的には事業主が外国人の労働者から「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出を受け、給与等を支払う都度、扶養する親族等の数に応じて「給与所得の源泉徴収税額表」により税額を算出して源泉徴収を行った後、その年の、最後に給与等の支払いを行う際に年末調整により、その者が納付すべき所得税の精算を行うこととなります。「非居住者」の場合、支払う給与等に対しては原則として20%の税率による源泉分離課税の方法により所得税の課税関係を終了させることになります。また、住民税については、1月1日現在、居住者として日本に住んでいた場合は納税義務者となります。住民税額は、前年の所得税の課税状況を参考にして4月以降に各市区町村で決定され、納税義務者に通知されます。住民税の特別徴収義務者に指定された場合は給与等を支払う際に住民税を徴収しなければなりません。