賃金不払残業の監督指導状況
■賃金不払残業の監督指導状況
是正総額239億円に
1千万円超企業は236社
定期監督や申告を基に労基署による監督で、賃金不払残業の是正件数が平成15年度1年間で1184社、支払総額が239億円にのぼっている。1企業100万円以上の是正案件を集計したものだが、1000万円を超える支払案件も236社で、過去2年間の合計を上回る企業数だ。
所定労働時間外に働いた時間に対する賃金や割増賃金を支払わない賃金不払残業に対しては、使用者が講ずべき基準や対策要綱、指針が策定され、また行政当局による監督指導が平成13年度から強化されている。
本資料は平成15年度に行われた是正結果を厚労省労基局が集計したものだが、従業員による申告などの増加を反映し、是正企業数、対象労働者数、支払額とも過去2年間分の合計をオーバーする異常さを示している。11月はキャンペーン月間に設定されているほか、来年度には監督・指導の強化方針が打ち出されており、企業の真剣な対策が求められるところだ。
表1は100万円以上の割増賃金の是正支払を行った状況をまとめたもの。平成15年度の是正企業は1184社で、平成13〜14年度の2年間合計の1016社を大幅に上回った。この結果、対象労働者数、支払額ともに1.5倍前後にのぼり、それぞれ19万4653人、238億7466万円に達している。
1企業平均の支払額は2016万円(過去2年度の平均は1514万円)、1労働者の平均は12.3万円(同11.4万円)である。
是正企業数を業種別に見ると、商業の348社がトップ(支払額50億639万円)、次いで製造業が318社(同108億5311万円)、その他の事業が110社(同238億7466万円)、金融・広告業が100社(同35億5764万円)となっている。
ただし、1企業平均支払額では金融・広告業の3558万円、製造業の3413万円が突出し、業種別トップの商業は1439万円、第3位のその他の事業は1556万円と半分以下の水準に。
さらに1000万円以上の是正案件で見ると、是正企業236社(全体の19.9%)、対象労働者14万7660人(同75.9%)、支払総額332億91万円(同88.1%)、1企業平均支払額8910万円。全体の是正企業の2割弱の限られた企業で、不払額の9割を占めていることになり、その悪質ぶりがうかがえる。
業種別では製造業と商業が63社で並ぶ。両者の対象労働者数の1企業平均は740人、750人とほぼ拮抗しているが、1企業平均支払額は製造業が1億6173万円と突出している(商業は6622万円)。これは製造業には最高支払額64億2927万円が含まれた結果で、これを除いた修正では平均6064万円となる。
なお企業数が3番目の金融・広告業(36社)は1企業の平均支払額が8927万円で、事実上のトップと言える。
表1 100万円以上の割増賃金の是正支払事案
企業数 |
H13.4〜H15.3 |
1,016 |
H15.4〜H16.3 |
1,184 |
計 |
2,200 |
対象労働者数(人) |
H13.4〜H15.3 |
135,195 |
H15.4〜H16.3 |
194,653 |
計 |
329,848 |
是正支払額(万円) |
H13.4〜H15.3 |
1,537,717 |
1企業平均額 |
1,514 |
1労働者平均額 |
11 |
H15.4〜H16.3 |
2,387,466 |
1企業平均額 |
2,016 |
1労働者平均額 |
12 |
計 |
3,925,183 |
1企業平均額 |
1,784 |
1労働者平均額 |
12 |
平成13年4月以降の監督指導結果について見たのが表2。
同14年11月、同15年6月、11月、同16年6月各期とも労基法第37条
(時間外、休日、深夜労働割増賃金)の違反率は、ほぼ35%前後となっている。
つまり賃金コスト削減のために法律違反が広く行われていることを示しているわけで、企業のコンプライアンス意識の改革が強く望まれるところと言えよう。
表2 監督指導時期別違反状況
対象事業場 |
平成13年 |
平成14年 |
平成15年 |
平成15年 |
平成16年 |
10〜11月 |
11月 |
6月 |
11月 |
6月 |
監督実施事業場数 |
2,589 |
3,030 |
4,311 |
3,384 |
4292 |
労基法第37条違反 事業場数 |
750 |
998 |
1,543 |
1,263 |
1562 |
(−) |
(564) |
(902) |
(791) |
(954) |
違反率(%) |
29 |
33 |
36 |
37 |
36 |
(−) |
(19) |
(21) |
(23) |
(22) |
( )内は36条違反内容が労働時間不足によるもの |
(出所 労働新聞)
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